中国周遊⑤ 木次線
交通記録 宍道→備後落合
※ こちらは26年7月10日のものです。
おはようございます。中国周遊3日目です。今日は丸一日かけて山陰から山陽へと移っていきます。ここ島根県と山陽を結ぶ最も主要な鉄道ルートは、やはりJR伯備線。特急やくも号が高頻度で行き交い、岡山から出雲市までを結びます。伯備線は現在も陰陽連絡線として活躍しますが、他にも陰陽連絡の役割を失ってしまったローカル線がいくつか存在します。今回はその1つ、木次線へ。宍道湖の南岸に位置する宍道駅で降ります。


中国山地でもって長い県境を持つ広島・島根県境ですが、両者を結ぶ鉄道は、現在木次線が唯一。島根県から広島県三次市までは松江自動車道が走り、三次からは中国道に接続するため、両県をまたぐ都市間輸送は、高速バスが圧倒的に優位です。乗車するのは、9:11発の木次行。まずは途中の木次まで行きます。車窓には石州瓦の建物に、緑色で染まった稲穂が美しい、のどかな風景が映ります。


9:45木次駅に到着。旧木次町の中心駅で、合併して雲南市となった現在は雲南市の中心駅となっています。駅前には商業施設もあり、静かとは言え市の中心という感はあります。木次は「きすき」と読み、「好き」が連想されるため、ハート柄の駅名標が用意されています。初見では読めない難読地名。もともとは「きつぎ」だったのが、言いやすく変化したのかもしれません。




少し木次駅を歩いて散策します。ここ木次を含む雲南市は神話の里と称されます。中でも有名なのは、ヤマタノオロチ伝説。国つ神であるアシナヅチとテナヅチの娘がヤマタノオロチの犠牲になり続けており、最後の娘であるクシナダヒメを守るべく、スサノオノミコトがヤマタノオロチと相対するという神話。三種の神器の1つとして知られる草薙の剣は、この際にヤマタノオロチの中から出てきたとされています。そんな神話ですが、リアリスティックな見方をすると、暴れ川として人々の生活を脅かすこともあった斐伊川をオロチと見立てたという説も。この周辺はたたら製鉄が盛んで、鉄の錆による赤色が土地や河川にも影響を及ぼしたとも言われ、血を連想させるような赤色も、恐ろしいオロチの伝説につながったのかもしれません。
改めて、木次線へ。次の列車は出雲横田行。木次始発という扱いですが、先程宍道から乗ってきた車両がそのまま横田行となるようです。


10:18木次発。木次以南はかなり静かな区間で山間部に入っていきます。大きな集落は、出雲三成と出雲横田の2つ。どちらで降りようか迷いましたが、何となく三成で降りてみることにしました。舞台は雲南市から奥出雲町へ。

木次線の可愛いラッピングが



奥出雲町ですが、かくては仁多町という町でした。隣の横田町と合併して現在の姿となりました。仁多の市街地を散歩します。ここ旧仁多町には、仁多米という全国的にも有名なお米があります。中心部からは若干はなれますが、駅前に大きな食堂があり、そこで仁多米をいただけるそうなので、そちらへ。仁多米食堂さん。お米のお替り無料で、米が有名な町の拘りを感じます。チキン南蛮定食を注文。ふっくらと炊かれたお米が言うまでもなく絶品でした。




12:32発の備後落合行に乗車。いよいよ、有名な秘境のターミナル駅・備後落合に向かいます。落合に向かう列車は皆1両だと思っていたのですが、三成へは2両編成で入線。前より車両に乗りました。次の亀嵩では駅舎で蕎麦をいただけるようで、車内からも蕎麦を食べている人たちが見えました。そして次が、出雲横田。発着便も多く設定される拠点駅です。横田では14分ほど停車。どうやらここで後ろ1両を切り離すそうです。前側に座っていてよかったです。ここから先は県境となる中国山地。定期利用者は恐らく殆どおらず、かなりの閑散区間。1両でゆっくりと向かっていきます。


横田ー落合間は1日3本の運行。今まで乗ってきた本数の少ない路線、小野田線本山支線が3本/日、予土線江川崎以南が4本/日なので、それに匹敵するレベルです。ただ、それらの路線と一概に比較するのは違う気もしますが、木次線のこの区間は以外にも混んでいました。座り切れないほどではないものの、シートに空きが多いかと言われるとそこまででもない様子。この手の路線は鉄の人が多い印象もありますが、そうではなさそうな人も少なくないです。列車は横田の2つとなり、出雲坂根に到着。坂根では10分停車。ここ出雲坂根は3段スイッチバックで有名な駅。急峻な中国山地を越えるためこの区間は勾配がかなりきつく、鉄道では簡単に越えられません。そのため坂根に到着した後、方向転換して北に戻ります。この際に少し標高を上げたあと、再び方向転換。小刻みに登ることで急勾配を緩やかにしていくのです。ここ坂根では10分を利用して殆どの乗客がホームや駅舎外に降り立っていました。駅ではコーヒーなどの販売もあり、気分はさながら観光列車。駅舎外には延命水という湧き水があり、冷たい水をいただけます。

進行方向左側にはスイッチバック後に入る
登り勾配の線路が現れます




登場人物だそうです

坂根発車。今までの進行方向には線路は伸びておらず、先ほどと同じ方向に進みます。転線し、登り勾配の線路へ入ってしばらく進み、高度を上げます。しかし、このままでは北へと向かってしまいます。目指すは広島県、すなわち南側。ということで、ある程度高度を上げられたら、もう一度スイッチバックします。さらに高度を上げながら、進路を再び南へ取り直します。正確には東へ向かっていますが、この先のカーブで南へと舵を切りなおします。木々の隙間から少しだけ出雲坂根の駅舎が見えますが、あっという間にかなり高度が上がったことが分かります。

進行方向右側にまた線路が現れます

さて、この区間の見どころはこれだけではありません。坂根の駅前には広島県東部から島根県東部にかけて縦断する国道314号線が走っています。山々を越える難所は、木次線も314号も同じ。しかし、その解決方法はそれぞれ異なります。木次線が3段スイッチバックという珍しい方法で越えるのに対し、314号はループ橋で一気に高度を上げます。伊豆の河津七滝ループ橋なんかが有名な気がしますが、比較的珍しい設備。ループ線自体は鉄道でもありますが、新疋田ー敦賀間などトンネル内が多い印象です。ですがここはループ橋、橋になっており、その構造をよく見ることができます。木次線の車内からも、その様子が見られます。写真に収めるのは簡単ではないですが、目で見る分には迫力満点。ループ橋が見えるこの区間は、それこそ絶景区間を走る観光列車ばりに減速していました。定期利用者のほぼいない区間だからこそできる、粋な計らいとでもいうべきでしょうか。


円構造になっていることが伺えます
ループ橋と分かれると、いよいよ島根県最後の駅・三井野原。ここでそれなりに多くの人が降りていきました。スキー場があるそうですが、季節でないしどういった層なのかは不明です。そして残ったのは、如何にも鉄っぽい人ばかり。備後落合に向かいます。


広島県最初の駅・油木駅を出て、列車は備後落合に到着。三方向から列車が落ち合う駅。芸備線との乗換駅です。木次線は3本。芸備線は三次方面が5本、新見方面が3本。それが1日の発車本数です。しかし、各方面の列車がほぼ同時刻に到着し、出発していくため、乗換は簡単にできます。ただ、同じように動いている人も多いので駅は人が意外にも多く、秘境感が味わえるかと聞かれると微妙なところ。おとなしく車で来るか、何とかして接続のない三次方面からの便を狙うなどすれば、人の少ない山奥の秘境ターミナルを最大限楽しめるかもしれません。しかし、人が多いからと言って面白くないかと言えばそんなことは全くありません。山々に囲まれた位置に線路が敷き詰められ、なかなかに独特な風景となっています。






ということで、木次線でした。鉄の人以外も楽しめる良い路線でした。とはいえ経営状況は良くないでしょうし、廃止も時間の問題かもしれません。執筆時点では、千葉県の豪雨の影響で久留里線久留里ー上総亀山間の復旧断念が発表されました。意図しないタイミングでの災害などでそのまま廃止、なんてこともないとは言い切れないので、こういった赤字に瀕する路線は早めに乗っておきたいですね。
ここからは芸備線に乗り換えて福山を目指しますが、今回はこの辺で。
それでは。ありがとうございました。

